「トイレ環境のひどいファンタジーラノベ」から始まった五選シリーズ。
あの企画が一年以上の時を経て、再び帰って来たわよ!
異世界には、まだまだあたしたちの想像を絶する醜悪なトイレ環境が健在。
いくら登場人物が美少女でも、衛生環境が汚ければ台無しだわ。
やっぱり美少女はただ可愛いだけじゃなくて、体臭だって重要ね。
もし転生して女神(最近は『異世界スマホ』みたいに男の神もいるけど)に会うことがあれば、この記事を思い出して、トイレがしっかりと整備してる異世界に飛ばしてくれるよう頼みなさい!
美少女を抱きしめたらいい香りがしてこその異世界転生だわ!
第五位:セーブ&ロードのできる宿屋さん
「トイレは一階、食堂スペースにあります。風呂は決まった時間、裏庭に設置される仕組みです」
「……トイレに、風呂? ここは貴族の屋敷かなにかか? 普通の民家には存在しない高級設備ばかりだな」
「いや、そのへんはちゃんとしてないと俺がイヤなんで……なので、工務店に色々無理言って造ってもらいました。この埋めこみ式クローゼットも、俺の発注なんですよ」
「ふむ……ずいぶんと不思議な発想をするものだな。まあ、あなたなら当然か」
「いえいえ、俺のいた世界のものを、そのまま持ってきてるだけですよ。俺が前にいた世界の人なら、きっと誰でも考えつきます」
「あなたのいた世界の人は、みな、あなたと同じような思考をするのか……」
神話において罪人が落とされるとされる場所ですら、そこまでひどい世界ではないだろう。
なるほど彼は獄卒のたぐいであったかと、ロレッタは妙に納得した。
「トイレはですね、くみ取り式しかないかと思ったんですけど、制覇したダンジョンのスライムが排泄物を食べるみたいなんで、そいつでどうにかしてます。食べて大きくなったスライムは分解して畑にまくと、いい野菜が育ちますしね」
「……その、肥料に使うとは聞くが、実際に口にするものがそうしてできていると解説するのは、やめてもらいたいな」
「ああ、すみません。けっこう苦労したあたりなんで、つい、自慢したくて」
「そういうことであれば仕方ないが……しかし、制覇したダンジョンなのだろう? ということはそのスライムはもう増えず、いつか尽きると思うが」
第四位:異世界お好み焼きチェーン ~大阪のオバチャン、美少女剣士に転生して、お好み焼き布教!~
「あの、すいません……」
「ああ、そこの通路を行って奥や。今は誰も入ってへんから、ゆっくりしていき」
店の奥には小さな通路をいった先にトイレが用意されている。
一般に、ダンジョンにトイレなどはない。敵がいない間に通路で用を足すのが当たり前だった。これは女子にはつらい。
そのトイレがある『ハルちゃん』は女性冒険者にとって、それはそれは大切な存在になった。さすがに水洗式ではないが、炎の魔法で定期的にハルナが焼き切って、臭いがたまるのを防いでいる。
キャラは可愛いのに、トイレは水洗じゃないって……
ほぼ『異世界詐欺師のなんちゃって経営術』の「糞捨て場」だし!
シソ先生の描く登場人物がこんなとこでトイレしてるのを想像すると幻滅。
第三位:本好きの下克上
実は、この三日間、寝室から出ていないんだよ?
トイレ以外でベッドから降りたら、ベッドに強制送還されちゃうなんて、ひどくない?
しかも、トイレって、寝室でおまる使うんだよ? すごい羞恥プレイだから。
ちなみに、家族も寝室でおまる使う上に、その中身、窓から外に放り投げるんだよ?
やっぱりお風呂もなかったよ。
我慢できなくて、身体拭いてもらったけど、めっちゃ変な顔された。
もう耐えられない! こんな生活!
確かに羞恥プレイだわ!
おまるな時点で「赤ちゃんかいっ!」って突っ込みたくなるし、 家族と共用だから父親や母親の排泄物を目撃するハメになるし、逆に自分のも見られるかもしれないし!
コミカライズ版がマインの恥じらいを上手く描いてるわね。
第ニ位:老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます
デスカイザーもブログで絶賛レビューしてた『ポーション頼みで生き延びます!』のFUNA先生が原作。
最初に見たのは漫画版で、あまりの原始的なトイレにビビったわ。
中国のトイレじゃないんだから!
女子高生になんてことさせんのよ!
原作だとこのエピソードは第二話で、トイレがどんなものかはスルー。
トイレの案内で家の外に出たが、……田舎だった。うん、予想はしていたけど、その更に上を行く田舎だった。この家と同じような木造、というか、そのまま木で造られた平屋の小さな小屋…げふんげふん、民家がかなりの間隔を空けてポツンポツンと建っている。ザ・田舎。あの、街灯も電柱も見当たらないんですが……。あ、景観保護のため地下埋設式なんですよね、やっぱり。
……って、あるかボケェ!! はぁはぁ。
あ、やっぱ町へ行かなきゃ無理だコレ。
映像にすると汚い部分の描写は避けられないのかもね。
JKに穴へ向かってトイレをさせる環境が二位なら、一位はどれほど劣悪なのか。
さあ、一位を発表するわよ!
第一位:異世界に転生したら美少女で女城主だった。
一位は先月発売したファミ通文庫の新作。
表紙からは綺麗な雰囲気が漂ってるのに、トイレはひどい。
「も、もうしわけないんだけど、リーラ」
「はい、お姉さま」
「そ、その……トイレはどこだったかしら?」
どんなに美しい美少女(重ねて強調)でも、さすがに出るものは出るらしく、俺は尿意を覚える。
「あ、トイレですね」
頭を打ったという言い訳があるとはいえ、さすがにトイレの場所が分からないというにはのは怪訝な顔をされるかな、と心配していたのだが、それは杞憂だった。
むしろ、自分の仕事ができたと嬉しそうな顔をすると、リーラは部屋から出て行く。
「お姉さま、少し待っていてくださいね」
そして去り際そう告げる。
「……? 待つ?」
待つとは何なのだろうか?
トイレが混んでいて、その順番を待つということなのだろうか?
その俺の疑問に対して、リーラは次に部屋に戻ってきた時、その俺の予想を見事に裏切り、思ってもいなかった解答をくれた。
「はい、お姉さま。持ってきました」
「……? その桶を何に使うの?」
そう、リーラは大事そうにちょうど風呂桶のような木製の桶を抱えていた。そしてその桶の中には少量の藁が。
「何ってコレ、お姉さまのトイレではないですか」
つまりはオマルということらしかった。ということは、藁は拭くのに?
マジで!?
表紙の美少女がオマルにおしっこしちゃうの!? しかも藁で拭くの!?
オマル使う点では『本好きの下剋上』と同じだけど、あたし的にはこっちのキャラデザの方が好みだから、お気に入りの美少女がオマルにしちゃうってギャップが……
しかもこの作品は『君の名は。』みたいな入れ替わりもので、現代人である主人公の魂は王女リーラの身体に、リーラ本人の魂は飼い猫の身体に入っちゃってて、主人公がリーラの姿でおしっこするシーンを、本物のリーラに見られてるのよ!
「はい、ではお姉さまのを捨てますね」
リーラはそう言うと、窓を開き桶の中身を捨てた。
窓の下には川が流れており、先ほどまで俺の体内に溜め込まれていたものが、濡れた藁と共に川のせせらぎとなって流れていく。間接的な水洗トイレといえなくもない。
「…………」
その一連の処理を絶句しながら見守る俺。
いや、本で読んだ知識の中に、ベルサイユ宮殿ではトイレの数が圧倒的に足りず凄いことになっていたとか、庶民の家はそもそもトイレがある家自体が少なくて、セレーヌ川が下水道状態だったとか、ハイヒールが発達したのは当時、街中にここではかけないようなものがわんさか落ちていたから発達した説とかは知っていたが、実際にその光景を目にすると、トイレという生活に密着しているものだけに、滅茶苦茶カルチャーショックを受けた。
なんというか、別の世界に来たのだということを、景色だけでなく体感で実感させられた。
(う~う~見られた……あたしがトイレをするところを見られた……いや、見られた以上のことをされた……お嫁に行けない……)
俺の横では、黒猫が耳と尻尾を垂らしながら激しく落ち込んでいた。
生理現象なのだから仕方のないこととはいえ、一応、主犯(実際、前の世界基準では覗いたら犯罪だし)は俺になるので、俺としてもちょっと気まずい。
ヤバすぎぃ!
自分の体が何者かに乗っ取られて、しかも目の前でおしっこしちゃうのよ!
単に汚いだけじゃなくて、精神的にもキツすぎぃ!
あたしも心がおっさんな部分があるから「美少女の体に入ってみたい!」「女の子の体でおしっこするとどんな感触か味わいたい!」って読者が興奮するのは共感できなくもないけど、女子の立場からしてみればたまったものじゃないわ!
「お嫁に行けない」以上の公開処刑よ! 問答無用で一位だわ!
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