@natusa_meuさん、突然で申し訳ないのですが、現在「小説家になろう」上で翻訳連載している台湾ラノベについて記事にしていただくことは可能でしょうか。もちろん波長が合わないというのに無理に、とは言えないので、一度ご覧になっていただきたく思います。よければお願いします。
— 台湾ラノベ翻訳するマン (@harakoatom) 2016年11月2日
ちょっと! そこはあたしに依頼しなさいよ! ブログにメルアド載せてるじゃない!
ムカついたから、芽羽に先駆けてなろう連載中の台湾ラノベである『5人の姉をもつ僕は独り身が運命づけられているんだ*1』『世界愛猫少女機関*2』『オレの妹はシスコン殲滅部に入部した』について記事にしたわ!
あたしはビジネス書を読みまくってるスーパーエリートだから、思いついたことを適当に羅列しただけの記事は書かないわよ!
今回は、消費者の行動モデルで有名なAIDMA(アイドマ)に沿って分析したわ!
Attention(注目)
まず日本のラノベじゃないってことで気になるのが好みの違いよね。
例えばロックマンだと、アメリカでは全身タイツのキモいおっさんなのよ!
ラノベは萌え萌えな美少女がいるから存在意義があるわけで、台湾ラノベに萌えが無かったら読む気ゼロだわ。
で、実際の表紙はどうなってるかというと……
萌えるわっ! こんな表紙を書店で見かけたら、つい立ち止まっちゃう!
Interest(興味)
表紙で注目を集めたら、次はあらすじね。
いくら表紙が萌え萌えでも、ストーリーがゴミだったら意味ないもの。
台湾で暮らす普通の高校生・李狂龍には2つの悩みがあった。一つは父親からつけられた狂龍というDQNネーム、そしてもう一つは“病的なまでのブラコン”を発症している5人の姉の存在である。
過保護の五女・香玲と中二病患者の四女・金玲、引きこもりの三女・玄玲、日本に留学しているはずの神出鬼没の次女・亞玲、一家を支えるキャリアウーマンながら酒癖のひどい長女・皇玲。
「30を越えるまで家の外の女は早い」とはばからない李家の姉たちだが、ある日、李狂龍が“クラスの女子と楽しく会話してしまった”ことから五人の姉による「妨害工作」が始まり、それは学校を巻き込んだ事件へと発展していくのだった─(『5人の姉をもつ僕は独り身が運命づけられているんだ』)
少女たちは「侵略者の手先」。
彼女たちはそれぞれ異なる世界を出自としていて、人並み外れた素晴らしい技術を身に着けていた。固有の属性と特質を備え、性格もまったく異なっている。
少女たちは自らの特務身分を隠し、表面上は普通の学生を装いながら、個々にこの世界にやって来て、それぞれの学校に通っていた。
この世界を手に入れるという使命のため、少女たちは本来互いに対立しているべきはずだが、因縁により、「ある理由」によって、秘密裡に少女たちの内一人が通っている学校に部室を立ち上げ、人知れず「クラブ活動」を行っていた……
両親が再婚してしまったことで、俺に妹ができた。彼女は外見が綺麗なだけではなく、個性も穏やかで成熟していて、学業成績も優秀、家事も万能、面倒見もとても良くて、ただ少しだけ天然が入っているという、その体から隣に住むお姉さんのような雰囲気を放っていて、しかも身長すら俺と同じぐらいだという子だった。
可愛い妹とは言ったけれど、もっと言えば優しい姉といったところだ。、
こんな妹が、まさか「親切なクラスメート」の勧誘の下、あの校内で悪名高いクラブへ入部してしまうことになるなんて─
「シスコン殲滅部」。
学校の中ではまた「妹同盟」とも呼ばれていて、部員は全て妹─待て待て、俺の家の妹は見た目からして少しも妹っぽくないっていうのに、どうしてそんな部活の部員になってしまったんだ?
兄になってしまってまだ日の浅い俺まで、シスコン殲滅部に睨まれ、俺の意見も無視して、俺がシスコンかどうかすら考慮しないまま、俺を「模擬ターゲット」として練習をするなんて!
妹をこの邪悪な部活から解放するため、俺は一歩も退かない覚悟で対抗する覚悟を決めた。相手はクラブの創設者兼部長で、学校の理事長の孫娘であり、妹が口にしていた「親切なクラスメート」でもある─
羽鳥森羅だ。
容姿端麗、優雅な気質を持ち、学業体育は文武両道、家柄を鼻にかけることもなく、学校中からひろく慕われているという、男女問わず憧憬の的となっている無敵の美少女だった。
羽鳥森羅の他にも、その他の部員たちも職業声優であったり、有名な地下バンドのボーカルであったりと、学校外にもファンは多いという連中ばかりだ─
あれ? よく考えてみたら、普通人である俺には、反抗したところでこれっぽっちも勝算なんてないんじゃないのか?(『オレの妹はシスコン殲滅部に入部した』)
並べてみると、あらすじは至って普通ね。流石に人物名は日本人っぽくないけど、そこだけ隠したら日本のラノベと間違えてもおかしくないわ。
『世界愛猫少女機関』や『オレの妹はシスコン殲滅部に入部した』なんて日本の作品にしか見えない。
Desire(欲求)
表紙とあらすじのクオリテイは、読者を惹き寄せるには十分な出来だわ。
手にとってもらったら、次は中身。
読者に「自分もこんな体験をしてみたい!」と興奮させられるか。
この点に関して、台湾ラノベは日本ラノベに大きく差を付けられてるわね。
というのも、キャラ描写がお粗末すぎるのよ。
例えば、電撃文庫の人気作品『俺を好きなのはお前だけかよ』では、ヒロイン初登場時にどういう文章になってるか。
一巻に登場したメインヒロイン三人を例に、容姿・行動・設定・口調に色付けをして引用してみたわ。
「おっはよー! ジョーロ!」
「いっつぅ! お、おはよ……。ひまわり」
「えへへへ~。ジョーロは今日もジョーロだ!」
何を当たり前のことを言っているのやら……。
僕の背中を天真爛漫な笑顔で叩いてきた彼女は、日向葵。通称ひまわり。
彼女の通称も僕と似たようなものだ。ひまわりを漢字で書いたら「向日葵」になる。
ちょうど彼女のフルネームを並べ替えたらそうなるってわけ。
ひまわりは、僕と幼馴染で同じ学校に通う同級生だ。
女子テニス部のエースで、運動神経抜群。
成績は下の中ぐらい。落第をするほどではない。
髪型は肩ぐらいまでの長さのボブカット。クリンクリンとした目が特徴的で、犬みたいで可愛らしい。胸はそんなにあるわけでもないけど、ないわけでもないBカップ。
だけど、スタイルはものすごくいいんだよね。
スポーツをやっていて、キュッと引き締まったウェストがよく目立つ美少女だ。
性格は、まぁ見ての通り、ちょっとおバカな元気キャラって感じかな。
陰気な僕とは違って明るい性格だから、学年や男女を問わず人気がある。
「やあ、ジョーロ君。今日も早いね」
「HRが早く終わっただけですよ」
いやぁー! 今日もお美しい!
この人と毎日会えて会話できることこそが、まさに生徒会の醍醐味と言ってもいいだろう!
まだ、始まってもいないけどね。
「それでもさ、いつも最初に生徒会に来てくれる君は、私にとって非常に貴重な存在だよ」
僕に優しい言葉をかけてくれる彼女は秋野桜さん。通称コスモス。
名前を見て分かる通り、コスモスは漢字で書くと「秋桜」だからだ。
一つ上の学年で、現在高校三年生。
はっきり言って美人。腰まであるロングヘアーが素敵すぎる。
ついでにこの人、容姿だけでもハイスペックなくせに、生徒会長もやっている。
生徒会長なんてものをやっているのだから、勿論成績もいい。ぶっちゃけ学年ナンバーワン。
「じゃあ運動は?」って質問にも答えると、もう凄まじい。万能ですよ万能。
しかもスタイルもすごくいい。胸もどっかのひまわりとは違い、中々に立派だ。
とある筋から入手した情報によると、Dカップらしい。
性格もすんごい良い。クールで冷たそうな印象の鋭い目つきをしているが、本当は優しくて、校内でも皆に好かれている。
「あら、ジョーロ君?」
ほら、いたよ! やっぱりこいつが受付にいたよ! だから図書室には来たくないんだ!
僕の嫌悪感をあっという間に満タンにした女は三色院菫子。通称パンジー。
こいつの名前を省略すると「三色菫」で、パンジーになるからだ。
今までの流れからすると、こいつもひまわりやコスモス会長と同じように、魅力的な女の子に思えるかもしれないから、先に言っておくね。
こいつに魅力なんて、微塵もない。
まぁ、なんで僕がそう言うかは、この後にする説明で分かってもらえたら嬉しいかな。
こいつは、僕と同学年で別のクラスの生徒。
三色院菫子とかいう気品のある名前をしているのに、普通の一般家庭で育ったというんだから詐欺としか言えない。
しかも、眼鏡をかけて三つ編みだよ?
今時ありえるのかよその格好? と思わずツッコみたくなってしまう容姿だ。
お前はアレだ。巻いとかなきゃダメだろ。ねじの如きロールヘアーでいるべき名前だ。
顔も並だし、胸はペチャパイって言うかない。
成績に関してだが、悔しいことに容姿に見合った上位ランカーだ。
特に現国と古典、それに漢文がやばい。
こいつが入学してから、誰一人として国語系科目でこいつの上に立てた奴はいないのだ。
つまりソレに関しては、常時学年ナンバー1。さすが三つ編み眼鏡だ。
性格は、はっきり言って最悪だね。
淡々としていて何を考えているか分かんないし、何より超毒舌だ。
しかも、その毒舌の的になっているのは、なぜか僕だけというのが納得いかない。
他の人は、全然言われてないんだよ?
流石はストレートエッジ契約作家*4だけあって、挿絵なしでもキャラの様子がめっちゃ伝わってくるわね。
ひまわりの元気バカっぽさとか、コスモスの凛とした様子とか、パンジーのねっちこさとか。
一方、『5人の姉』はどうかというと、
前の席に座っていたクラスメートが眼鏡を粋に持ち上げ、知的な笑みを浮かべるといった。「俺たちは競争関係にあるんだぞ。お前に何をしてやるにせよ、それは自分の首を締めることになるんだ、ふふ、俺がそんなアホだとでも? お前は俺の子分になる運命なんだ」
(略)
彼の名前は王雲逸といって、ただでさえカッコいい、まるで武侠小説に登場する武将のような名前を持っているばかりか、周囲とは一線を画するような特殊な雰囲気の持ち主でもある。普段からおしゃべりを好まず、一人で読書をしているような奴で、女子を含む全ての人間に対しては淡々と、自分のフレームのない眼鏡を押し上げつつ、軽く簡単に話を済ませてしまうのである。
僕も良く理解しているところだが、女子受けがいいというのはこういう手合いのことを言うのだ。更に毎回の定期テストでは学年上位の常連であり「勉強ができる優等生」という覇気までまとっているというのも、僕を奴の子分という身分へと近づけている要因だった。
五つ目のねえさんは明らかにいくらか気恥ずかしそうにしていた。彼女は手にパンダのイラストがプリントされた弁当箱を二つ持ち、礼儀正しくこう訊いた…
「後輩くん、もう一脚持って来て一緒に食べようよ。たくさん持って来たから」
「それはできません、俺はもう食べて腹もいっぱいですし、それに先生との約束もあるんです。ちょうど今から行くところだったんですよ」
雲逸は真面目くさった顔で口からでまかせをいった。奴はそもそも部室に言って昼食をとるつもりだったのだ。
くそっ、僕には逃亡するチャンスすらないのか。
五つ目のねえさんは頷いて謝意を示すと、片手でスカートを押さえながら、そそと雲逸の席に腰を下ろし、弁当を学習机の上に置くと、宝物を披露するかのように弁当箱を開けつつ、その上「ジャジャン」という可愛い効果音を発した。最後に僕の口の中から封も切っていない肉そぼろパンを取り出した。
「こんなのじゃ栄養にならないよ」
「ねえさん、とても重要な話をしたいんだけど」
「食事よりも大切な話があるの?」
五つ目のねえさんはパンダのイラストのついたフォークを掴み、弁当箱の中から角煮を一つ取り上げると、僕の口元へと持って来た。
「……」
僕はどうするべきか分からなかった。雲逸を一瞥すると、奴はすでに三歩を四歩に縮める勢いでその場から離れていくところだった。
「今日は特別おいしく作ったんだよ。はい、あーん」
「僕たちはこんなことを続けていくべきじゃないと思うんだ……本当に」
違いが一目瞭然ね。
まずどっちも容姿描写がないからどんな人物か想像できない。
表紙のアホ毛ピンクオッドアイが「五つ目のねえさん」なのかと思いきや、実際は四女みたい!
読者はエスパーじゃないんだから、ちゃんと容姿書きなさいよ!
バスケやってるなんて本文からは全然読み取れないし!
しかも「五つ目のねえさん」ってメインヒロインの一人なのに、主人公の友人ポジションの雲逸より説明描写が少ないし!
「ブラコンで後輩に対しても丁寧」ってことぐらいしか分からないわよ!
まとめ
台湾ラノベは、読者に買ってもらう部分(Interest)までは成功してる。
ただ、「この作品は面白い!」「ヒロインのシコリティが高い!」「俺もこんな体験してみたい!」レベルまでは読者の心を刺激するに至ってないわ。下手するとアマチュア以下。
日本だったら下手すると一巻打ち切りレベル。
ラノベは萌えが命なんだから、まずはヒロインの描写に全力を注ぎなさいっ!