とある王女の書評空間(ラノベレビュー)

二次元世界のエリート美少女による、宇宙一クオリティの高いラノベブログよ!

色彩の魔術師、Mika Pikazo先生の手腕光る表紙――『物理的に孤立している俺の高校生活』

物理的に孤立している俺の高校生活 (ガガガ文庫)

 

残念系異能力者が紡ぐ青春未満ラブコメ!

波久礼業平は異能力者高等専門学校の2年生である。彼には友達がいない。それもこれも彼の持つ能力、無意識に半径1m以内の人間のエネルギーを吸い取る、いわゆる「ドレイン」のせいである。
周囲からは露骨に距離を置かれ、モテる兆しは全くないし、そもそも友達がいない。定位置はクラスの一番後ろ。机から半径1mの位置に侵入注意のテープが貼られている。スクールカースト底辺というより範囲外といったほうが正しい。
「形態変化とか自分よりキモい感じの異能力者にだって友達がいるのに、おかしいだろ! 世の中まちがってる!」
彼の鬱屈とした感情は爆発寸前だった。
そんな悶々とした彼に声をかけたのは、校内で誰もがその名を知る孤高の毒舌少女、氷の姫こと高鷲えんじゅ。ひょんなことから彼女の秘密を知ってしまった業平は、彼女から友達を作る『同盟』を持ちかけられる。思わぬ提案に心を躍らす業平だったが、とても簡単なことを失念していた。「類は友を呼ぶ」ということわざの存在を……。そして、そんな悩みを抱えたぼっちは彼らだけではないということを……。

不遇な異能力のせいでぼっちになっている負け組たちが巻き起こす、学園異能力ライフ!

 

青のブレザーと、黄色のノッチドラペル*1

ヤドクガエルカラーな西都高校の制服が異彩を放つわね。まさに青の時代。

Mika PikazoならぬMika Picassoだわ。

 

森田季節先生はアラサーだってのに、ぼっち描写がリアル。

現役高校生作家が書いてるんじゃないかってくらい生々しいわ。 

 

「もしかしたら、友達ができたら、案外しょうもなくて幻滅するかもしれないぞ」

「むしろ、『高校時代の友達なんて無価値だったわ~』ってドヤ顔で言いたいし。持ってないってただそれだけの理由で、私にとって友達は魅力的なの」

「わかりすぎてつらい」

 一度、どっかのウェブの悩み相談で、「ぼっちでつらいです」という悩みがあり、その回答が「ぼっちは恥じゃないですよ」というものだった。この回答者は頭が悪すぎると思った。

 恥かどうかなんて気にしてねえよ! ぼっちだという状態が苦痛なんだよ! 苦痛だから痛み止めをよこせと俺たちは言ってるんだよ!

「はっきり言って友達というものにどれぐらいの価値があるのか、私は知らない」

 視線が合わないまま、言葉だけが二人しかいない教室に響いた。

 もし、ほかの誰かがいれば絶対に口に出せない言葉だ。

 友達の定義について語るなんて、どう考えたって痛々しい。抽象論はマジ地雷だ。

「所詮、流行ってるから自分もほしいって次元のものかもしれない。そんな人間関係、大学生になったらきれいさっぱり忘れるのかもしれない。だとしても――」

 これまでで一番、高鷲の声が大きくなる。

 叫びにしては小さいけれど、それは絶叫に聞こえた。

「私は、いいえ、私たちは友達がいないことですごくつらい思いをしてる。どうしようもないぐらい居心地の悪さを感じてる」

 本当にそうだよ。

 友だちがいなくたっていいと大人なら言うかもしれない。もしかしたら「俺も昔は友達いなかったけど今では人生充実してるよ」とか言う大人もいるかもしれない。

 そんな言葉、なんの救いにもならない。

 俺たちの現実が、友達がいないというだけでどうしようもなく灰色なのだ。息苦しいのだ。高校生にとって、高校の生活は社会の八割ぐらいを占めてるのだ。その八割が灰色なのに改善されないままって、文科省ぶっ壊すぞ!

 

分かるわ~。

孤独だと、困っても相談相手がいないからあらゆる面でキツいわよね。

バカな大人は友達がいない辛さを理解できないから困るわ。

 

そんなぼっちの業平と同盟を組むのがえんじゅよ!

 

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のびのびえんじゅがキュート!

 

えんじゅはギャップがたまらないわ!

他人に「酢豚系パイナップル」「かさつきアブラゼミ」なんてあだ名を付ける鉄面皮な毒舌少女なのに、ココロオープンの電光掲示板では素直に返答してるし!

おっぱい揉んだらどんな反応するのか想像すると……

 

業平を「グレ君」って君付けで呼んでくれる点にも萌え!

村人もコメント欄で同意するほどよ!

 

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そんな毒舌家のえんじゅだけど、上に書いたように根は素直。

心の底から業平を理解し、業平のために動けるいい娘なの。

 

「私は同盟相手が間違えた道に進もうとしたら、止める義務がある。私はグレ君が友達を失うことを見過ごさない。ここで逃げたらグレ君が絶対に後悔する」

 ずっと、高鷲えんじゅという女子は虚勢を張って生きてると思っていた。

 勝気な表情も、口が悪いのも、全部が全部、ポーズだと思っていた。

 そうじゃなかった。そんなのは全部高鷲の意志の強さが作ったものなんだ。

「私はグレ君が友達を作れるように努力してきた。カラオケボックスではひどい目に遭わせたけど、どうにか菖蒲池さんが見つかったじゃない。グレ君も私のためにあれこれ考えてたわよね。そこにウソはなかった、だったら、同盟は破られてない!」

 負けた。これじゃ、逃げられない。目の前の高鷲から逃げられない。

「同盟相手として言うわ。グレ君は彼女と向い合いなさい。戦いなさい。異能力のせいにするのを今回だけはやめなさい。それで傷ついてみればいいのよ。もしかしたら、傷つかずにすむかもしれないし、それでボロボロになったのだったら――」

 ようやく俺の指を離し、元の位置に戻って振り返ると――

 高鷲は自分の胸に手を当てて笑った。高鷲にしては少し爽やかすぎた。

「私のところに戻ってくれば? 単純なグレ君の気持ちぐらい全部わかるから」

 

こういう対等な関係って素敵!

遠慮せず互いにぶつかり合えるからこそ、見てて清々しいわ。

 

 

*1:下襟の一種。