定番の異世界転生と思いきや、俺はニートのおまけ───?!
台湾の高校生・慕飛は、成績優秀・容姿バツグン、おまけに世界的に有名なコックを父親に持ち、高校卒業後は自動的に事業を継ぐことが決まっている、正に非の打ちどころのない生活を送っていたが、トラックに轢かれそうになっていたニートを助けてやったために、ニートに巻き込まれるようにして異世界に転生してしまう。
けれど“ニート主人公でないとチート能力を授かれない”という慣例によって、異世界転生の主人公になれず、何の能力も与えられなかった慕飛は、初心者向けの村・バニータ村で雑用として働き始める。
異常にケチ臭いハーフエルフによって支配された閉鎖的な村での生活は苦しく、助けてやったはずのニートは『天選之子』として祀り上げられたことですっかり舞い上がり、慕飛のことを奴隷のように扱うのだった。
それでも自分の身を守る術も持たない慕飛には村から出て行くという選択肢はなかった。
しかしそんな彼の住む村を、突然一匹のドラゴンが襲ったことで、村での生活が一変してしまう。
果たして彼は異世界での生活を変えられるのか、
そして再び台湾に戻ることができるのだろうか───
台湾角川新人賞でデビューして以来、予測不能な展開で台湾のライトノベルファンを翻弄して来た作者が贈る、今までにない異世界転生ラノベ。
台湾ラノベ『美味的異世界料理,需要加點龍(美味しい異世界料理には、龍が欠かせない)』の翻訳。訳者の原子アトムに頼まれてレビュー。
日本語版は紙では出版されておらず、Kindle版のみ。
ニニ日まで無料DLキャンペーンをしてるから、アプリさえあればすぐ読めるわ。
……とか言ってる内に無料期間終わっちゃったわね。
記事自体は一八日から書いてたんだけど……
台湾オリジナルラノベの無料キャンペーンを
— 台湾ラノベ翻訳姫(타이완 라이트노벨 ) (@harakoatom) 2018年4月16日
【2018/4/18 16:00~2018/4/22/ 03:59】
の5日間限定で実施します!つまりタダ!日本の異世界転生ラノベファンのみなさん、ぜひこの機会にDLしてみてください!
もちろん有料版(¥610)はいつでもDL可!https://t.co/LnpfStpVOW#どらそえ pic.twitter.com/OsQrANo1A5
ラノベブロガーが大勢いる中、わざわざあたしに依頼するとは分かってるわね。
台湾ラノベをレビューするのはこれで二回目。
多分芽羽にも依頼来てるだろうから、早く書き上げれば鼻を明かせられるわ。
前回レビューした『有五個姐姐我就注定要單身了啊(5人の姉をもつ僕は独り身が運命づけられているんだ)』は、アマチュア以下の描写力(文章力じゃなくて!)なのにミリオンセラーを達成し、ニ〇一五年には実写版の製作が発表されたみたい。
いやおかしいだろ!台湾でミリオンセラーのラノベ《有五個姊姊的我就註定要單身了啊》の実写版の製作が2015年に発表になってからヒロインである五人の姉を誰が演じるのか憶測が飛び交ってたけど、一人は謝金燕で確定って!彼女今年で43だぞ!どうやって女子高生の姉やんだよ!あと170㎝ってデカいわ! pic.twitter.com/9Q2mp5Ig51
— 台湾ラノベ翻訳姫(타이완 라이트노벨 ) (@harakoatom) 2018年4月18日
うーん……台湾人ってラノベの評価甘すぎない?
「また駄作なんじゃ……」と不安を抱えたまま『どらそえ』を読み進めると……
うん、ゴミ。
依頼受けた手前最後まで読んだけど、何度も読了を断念したくなったわ。
このブログで酷評した『ソシャゲライター クオリアちゃん』『地球丸ごと異世界転生』『カンスト勇者の超魔教導』を上回る核地雷。
そりゃ台湾ラノベがこんなレベルの作品ばかりなら、GA文庫に翻訳出版断られるのも納得せざるを得ないわ。
よくもまあこんなゴミを輸入してくれたものだと怒りが湧いてくる。
というわけで、ここからは「ラノベを酷評させたら日本一」なAmazonレビュアー、ヤボ夫風に『霊子先輩は実写化希望!!』『タタの魔法使い』のレビューを真似て、作品の悪かった点を列挙してくわ。我流でレビューしても文章力向上しないしね。
あたし、こう見えてヤボ夫をちゃんと尊敬してるのよ。
読む前の第一印象だけなら悪くない。
やや露出度高めのヒロインに、デフォルメされたドラゴンが描かれた表紙。
「異世界×メシ」が一目で分かるタイトル。流行を押さえてる。
あらすじに関しても、本来召喚されるはずだった人物を差し置いて活躍する、ダッシュエックス文庫から出版された『骨の髄まで異世界をしゃぶるのが鈴木なのよー! !』っぽい作品なのかな、って期待できるし。
台湾の作品だけど、日本人好みの内容になってる。
ただ、本編があまりにも酷すぎ。事あるごとに悪い意味で予想を裏切られる。
例えば冒頭。
主人公の慕飛(ルビがないから読み不明)は学校が終わると父親の経営するレストランを手伝う料理中心の生活を送ってて、父親の事業を受け継ぐために大学には進学しないの。加えて高身長で女子にモテまくり。
「勉強はできるけど、それ以外に特技はないし、女子にだってモテない」なんて日本のラノベ主人公とは対極的な設定。どこにもオタクっぽさは感じられない。
なのに何故かラノベ事情に詳しく、自分が異世界に転移したことをあっさり受け入れるわ、「主人公だけが転生して来るもんじゃないのか?」と異世界もののお約束を熟知してるわ、挙げ句の果てには自分が「天選之子」だと思って舞い上がるわで、唐突に明かされるオタク設定に戸惑うばかり。
まあラノベだし、細かいことはスルーすればいいんだろうけど、特に理由もなくテンプレを変な形で外されると流石に疑問を抱かざるを得ない。
うーん……例えば、「魔王を倒しに行ったら……誰かが倒しちゃってました!」は、確かに意表を突いているけれども、やっちゃいけないことですよね。
これでは「意表を突く」ではなくて、ただの「肩すかし」です。やはり王道であるからには、主人公が頑張って欲しい場面では「やったぞ!」という達成感をがつんと与えなければいけない。これは大事なことだと思います。
【堀井雄二インタビュー】「勇者とは、諦めない人」――ドラクエが挑んだ日本人への“RPG普及大作戦”。生みの親が語る歴代シリーズ制作秘話、そして新作成功のヒミツ
「誰かが倒しちゃってました!」的な肩透かしの展開はその後も頻出。
慕飛とニートのどちらが「天選之子」なのか確かめるシーンでは、ニートが水を張った盆に指を入れると消火栓が暴発するみたいに水が吹き出すけど……
ショボくない!?
バラエティ番組のドッキリかい!
そもそもニートの本名が明かされないことに嫌な予感がしてると、見事的中。
集落にドラゴンが現れ、ニートは大した活躍もできずに炎に飲み込まれるわ。
「天選之子」は「不思議な魔法の力を備えていて、ドラゴンの爪より我らの集落の安全を守って」 くれるんじゃなかったの?
あ、爪じゃなくて炎だから駄目だった?
まさかね。
主人公とニートはなんやかんやで生き残ったものの、その後ドラゴンはパブに侵入して、 中の人間を残らず平らげたんだとか。
え!? この作品ってそういうシリアスな物語だったの!?
『スライム倒して300年』『温泉ドラゴン王国』みたいに、人間とドラゴンが仲良くほのぼのする内容に感じたんだけど……
とまあ一事が万事こんな調子で、ここまででやっと本編の一割が終了。
正直これ以上読むのが苦痛なんだけど、「レビューするからには最後まで読まなければならない」という義務感でなんとか頑張ってみるのだけど……やっぱり辛い。
慕飛ではドラゴンに太刀打ちできないんだから、父親から受け継がれた文化資本を活かし、異世界でレストランでも開業して今流行りの異世界飯ものになるのかと思いきや、今度は狩猟団が集落に駆けつけて契約がどうのこうのという展開に。
料理作るのかドラゴン倒すのかハッキリしなさいよ!
なんかドラゴンの生態教えてもらったり、異世界の生き物で料理作ったり、集落の外の街で買い物したり、ドラゴン倒したりみたいな話もあったけど、そこら辺に辿り着くころには完全に「目が滑る」という状態に陥っててさっぱり記憶に残らなかったわ。
とにかく設定に必然性がなく、作者がどんな物語を書きたいのかが全く分からないため完全に「読む苦行」と化してる。
「台湾角川新人賞でデビューして以来、予測不能な展開で台湾のライトノベルファンを翻弄して来た作者」とあるけど、単に実力不足なだけじゃないの?
あとイラストが少なすぎ。表紙以外はカラー挿絵が本編の半分あたりに一枚だけ。
まあ、ビジュアル化するほど魅力的なキャラが全然出てこないという理由かもね。
これで普通のラノベと同じ値段なのだから驚き。
いやー、 こんな駄作を最後まで読み通したあたしを褒めてあげたいわ。
ぶっちゃけると、プロ六年目なのに読者を無視したオナニー構成しかできない作者も、この文章にISBNコード当てて書店やAmazonに流通させるだけの価値があると判断した編集も、職業適性ゼロだから辞めた方がいいんじゃないかしら。
……でもあたし以外は大絶賛なのよね。あたしの感性が摩耗してるの?
この世の全てはこともなし : 異世界にドラゴンを添えて CHIKOTO (著) Atom Harako (翻訳)