嘘でしょ?! あたしの名前がないし!
数多くのビジネス書を読破し、キャッチコピーやセールスライティングに精通してるこのあたしが落選だなんて!
……まあ、愚痴ってばかりだと次につながらないから、どうして受賞できなかったかを、優秀レビュー+αと比較することにしたわ。
映画版の予告が、あたしを捉えて離さなかった。
まるで実写かと見紛うほどの、光によって豊かに彩どられた世界。
RADWIMPSの楽曲が描く、瀧と三葉の爽やかな青春。
果たして二人は無事に出会えるのか。公開まで待ってられなかった。今すぐ顛末を見届けたかった。
そして小説を読んで全てを知った。本作はただのありきたりな物語なんかじゃない。彗星の来訪も、二人の入れ替わりも、それらは偶然ではなく、遥か過去から繋がっている「ムスビ」なのだと。
もしかしたら、あたしがレビューを投稿する行為さえその一部なのかもしれないわね。(あたし)
それがどんなに大切な記憶であっても、全てを覚えていることはできない。
私はいつでも、無意識のうちに大切な人のことを少しずつ忘れていく自分に抗いながら生きている。忘れまいとがむしゃらにもがく姿は時に人に理解されず、孤独さを伴うものだ。
だが、いちど恋をしてしまったら、そうして前に進んでいくほかない。だから私は、同じたったひとつの理由でもがき続ける三葉と瀧が放つ熱を帯びて、二人に併走して一気に時を駆け抜けた。
「君の、名前は」好きな人の名前を唇に乗せようとして胸を高鳴らせたことのあるあなたに、きっと届く物語。 (ユメ)
「忘れない」そう言い決意しながら人は多くのことを忘れつつ日々を生きていく。忘れたことにも気づかぬふうに。
忘れて生きる自分を、忘れて生きる他人をようやく許せるようになった、この歳になった今『忘れる』ことに全力で抗う物語に出会ってしまった。たとえ星が墜ちるとも、きっといつか君に会う。そんな一途さで時間、記憶、そして忘却さえ飛び越えていく少年少女の物語。
これはかつて少年少女だった人たちに読んでほしい。読んで、そして自分が忘れてきたものを思い出し、すこしの後悔と寂しさがもたらす痛みに涙するがいいのだ。私のように。 (inarix)
ぜったいに、ぜったいに忘れない。あの季節に出会った景色を、匂いを、手触りを、そして君を。
ありふれた日々の中で記憶の底に沈んでしまったとしても、この身体のどこかに宿っている。刻まれている。言い尽くせない感覚となって─。
不思議な夢が運命を結ぶ。あらゆる現象の常識も超越して。理解の及ばない感情が波のように流れ込んでくる。
なんなのだ?この気持ち…私は知らない。熱くて、抑えきれなくて、もどかしくて。瑞々しい感性を持ったあの頃から遠ざかった大人世代にも是非読んでみて欲しい。 (ハル)
あの人と、ずっと一緒にいたい。
そんなふうに切実に思ったことが、誰にもあるはずだ。
でも僕たちは忘れてしまう。
ずっと一緒にいるために必死にもがくことを、一緒にいたかった気持ちを、
あの人のことを、忘れてしまう。
『小説 君の名は。』は、そんな僕たちのための物語だ。
主人公の二人は夢の中で出会い、そして実際に会うために、やがて一緒にい続けるために、全力を尽くす。
「忘れること」に抗いながら。
人が人を思う気持ちの切実さを、この本はきっと思い出させてくれる。(ダ・ヴィンチ編集長によるレビュー例)
並べると一目瞭然ね。
あたし以外のレビュアーはみんな、編集長と同様に「忘れる」というキーワードを盛り込んでいた。inarixに至っては八回も。
実を言うと、あたしも「忘れること」を軸にして書こうかとは計画してたんだけど、それだとレビュー例を丸パクリじゃない?
あと、他のレビュアーも同じ戦略を取りそうで差別化できないって理由もあった。
負け犬の遠吠えになっちゃうけどさ、採用されたレビューってそんなにいい?
「好きな人の名前を唇に乗せようとして胸を高鳴らせたこと」があるのはリア充だけだろうし、「すこしの後悔と寂しさがもたらす痛み」なんて言われても知るかって話だし、「あの季節」「あの頃」ってJPOP臭過ぎる意味不明ワードだし。
ま、ダ・ヴィンチ編集部と読書メーター運営事務局が気にいるレビューを書けなかったあたしに問題があるのは否定できないけどさ。
冒頭に赤裸々法(『伝え方が9割』参照)を持って来て印象づけたつもりだったんだけど、戦略が完全に裏目に出ちゃったわね。