最強最悪の吸血鬼を倒すのか、嫁にされるかDEAD OR BRIDE!!
……え!? 嫁ってなに!?
かつて最強最悪と恐れられた吸血鬼を運悪く解放してしまった九条翔馬は全国手配に。吸血鬼復活に揺れる魔法都市横浜、捜査に動き出す魔法機関。そんな中、翔馬は機関員の風花まつりに求められ、秘密裏に吸血鬼打倒を目指す。一方、吸血鬼は魔力を取り戻そうと『九条の血』を狙っていた。
来る戦いに備え、同居を始める翔馬とまつり。だが、二人の前に美しき転校生が現れる。その正体は吸血鬼で、彼女の武器は吸血した者を『嫁』にする力だった――!?
もし機関に逮捕されれば即死亡。吸血鬼を倒すか、嫁にされるか、DEAD OR BRIDE!!
青一面の冷たい雰囲気漂う表紙から、この物語が吸血騒動で人死に多発のシリアスな作品だって第一印象を抱いて、読むのを躊躇しようとしなかった?
だとしたらもったいないわ!
この作品は初見の印象とは裏腹の、ギャグ満載ドタバタコメディなのよ!
「よくぞ我が封印を解いた!! 人間!」
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
それはグリムフォード魔法学院の地下、進入禁止区域。
目の前に立ちふさがるは、真紅の瞳。
突然の出来事に九条翔馬は腰を抜かしていた。
え、なに、なにこれ?
どうなってるのこれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!?
わ、訳が分からねえよ! 一本道でやってきた学院地下の謎の部屋。その全面に描かれていた魔法陣が突然光りだしたと思ったら、白髪で赤い目の女の子が……きゅきゅきゅ、急に!
(略)
「だが、かけられた封印は一つではない。我が魔力にもそのほとんどを封じる魔術がかけられているのだ……そしてその封印を解く方法は、たった一つ。それがなんだか分かるか?」
翔馬は首を振る。でも、なんだろうイヤな予感がする。
「それって、な、なに?」
マジでものすごくイヤな予感がするんだけど!
慄く翔馬。すると吸血鬼はその赤い瞳を細め、ノドを鳴らした。
「……封印者の一族であるお前の生き血を吸い、その魔術まで支配することだ!」
「やっぱりねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ――――――――――――――ッ!!」
ね、意外と軽めの文体でしょ?
この文体が、キャラの魅力を引き出すのに一役買ってるの!
ぶっちゃけ主人公サイドはヒロインに全然魅力ないんだけど、敵側のキャラがみんな可愛いのよっ!
特にアリーシャが絶品だわ!
モノクロだとあんまり可愛くないけど……
(真ん中がアリーシャ)
カラーだとこんなに可愛いの!
制服着て、ニーソ履いた脚組んで、髪の毛をなびかせながらキリッと決めてる表情が悪役とは思えないくらいキュート!
しかもね、両サイドの二人も結構魅力的なのよ!
イタズラ好きのメアリー(右側)がアリーシャにちょっかい出して、冷静さを保てず普通の女子高生っぽい口調になっちゃうアリーシャのギャップに萌え!
「実は今日、アリーシャちゃんにプレゼントを持って来てるんだっ」
「……プレゼント?」
「うんっ。アリーシャちゃんの役に立ったらいいなと思って」
そう言ってメアリーは持っていた革製のバッグから様々な本を取り出すと、そのままテーブルの上に積み重ねていく。
「なんだ……これは?」
「メアリーおすすめの恋愛小説、マンガ、その他もろもろでーすっ」
「この悪の吸血鬼に、一から恋愛を勉強しろというのか?」
「あれれ? いらなかったぁ?」
お伽話に出てくる小動物のように、メアリーは可愛らしく首を傾げてみせる。
「…………ま、まあ本来なら必要ないが、、目を通すくらいはしてもいいだろう」
(略)
「なによこれはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――っ!?」
盛大に吹き出した。
悲鳴を上げ、手にした本を大慌てでメアリーに突っ返す。
「どどどどうして、こ、こ、こんな物が入ってるのよッ!!」
アリーシャは思いっきり顔を上気させていた。
「あーこれ? ちょっとエッチな手をあれこれ使うのも効果的だと思って。男子はみーんな大好きみたいだよ、この『悦楽天』って雑誌」
「そそそそんなのは必要ない!」
「ほら、こういう感じでガバっと九条くんを押し倒して……」
「ペ、ページをめくって見せるなっ!」
「ほらほら見て見て」と動きまわるメアリーから、アリーシャは全力で顔を背け続ける。意地でも『悦楽天』を視界に入れないつもりだ。
しかしメアリーは止まらない。
「……九条くん、お願い電気を消して」「アリーシャ……これでいいかい?」「あ、九条くんっ待って」「もう我慢できないよアリーシャっ!」「ああっ九条くん、そこはァっ」
「一人舞台を始めるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――ッ!」
悪の吸血鬼のくせして意外とウブなのね。
メアリーがいじり倒したくなる気持ちがよく分かるわ。
もう一人、人狼の玲(さっきのカラー左)は可愛い物に目がなくて、ときどき暴走してはアリーシャにツッコまれるの。
「……さっきのはさすがにやり過ぎだけど、メアリーの一人舞台、悪くはなかったわよね」
ソファにもたれかかったアリーシャは、考え始める。
電気の消えた状態で二人きりなんて、そんなのもう勝ったも同然だもの。
ようやく顔の熱が引いてきたアリーシャは、きょろきょろと当たりを見回す。そして誰もいないことを確認すると、重ねられた本の中からいくつかをそっと引っ張りだした。
「ま、まあ、これくらいなら」
そしてそこまで肌の露出が激しくないものを選んで、恐る恐る中身を開いてみる。
――――その瞬間だった。
バーン!! と、ドアが壊れるほどの勢いで開いた。
ビクゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!
これでもかというくらいに高く飛び上がったアリーシャは、大慌てで手にした本を背に隠す。
「な、な、な、なにッ!?」
うろたえながらドアの方を見ると、そこにいたのは息を切らせた玲だった。
ドキドキと鼓動が高鳴って仕方ないアリーシャへ、玲は元々鋭い目をさらに細め、キリッとした表情を向ける。激しい吐息に合わせて大きな胸が揺れていた。
「アリーシャ様がエッチなあれこれと聞いて!」
「出てけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ――――――――ッ!!」
こんな感じで結構面白い作品なんだけど、二巻以降は電撃文庫から出版されなくてカクヨムで連載してるのよね。
つまり売上が芳しくなかったってことかしら。
実際改善すべき点はかなりあって、
- 表紙からコメディだと分かるようにする(本当はタイトルもどうにかすべきだけど、今更変えられないし……)
- 用語辞典はカット(コメディには不要)
- アリーシャ達のイラストを増やす(九ニページからニ六九ページまでイラストなしってどうなの?)
- アリーシャ達の出番を増やす(その分まつりの出番を減らす)
- 主人公とアリーシャをもっと仲良くさせる(正体がバレたっていいかも)
ってとこね。『緋弾のアリア』を参考にするといいんじゃないかしら。
高樹凛先生が上手くストーリーを作れなかったのかもしれないけど、それを修正できなかった編集の戦略ミスでもあるわ。
ラノベは基本、楽しくあるべきよ!
こんな宣伝で売れるなら誰も苦労しないっての!