とある王女の書評空間(ラノベレビュー)

二次元世界のエリート美少女による、宇宙一クオリティの高いラノベブログよ!

ドS美少女とエッチしたい!――『絶対彼女作らせるガール!』

絶対彼女作らせるガール! (MF文庫J)

 

あらすじ

恋愛必勝の女神は実在する――!? 優秀賞受賞作!

この学園には必勝の女神がいる――。白星絵馬の手のひらに願い事を書くと叶う、そんなジンクスといつも笑顔な人柄で学園でも人気のクラスの太陽・絵馬を尻目に、目立たず冴えない自称幽霊の大地は生徒会室へ。憧れの生徒会長・獅子神玲花の雑務のためだ。が、ある日、大地が偶然絵馬の「とある秘密」に触れたことで、絵馬が大地の恋愛を全力応援すると宣言! さらに絵馬を信奉する学園トップ美少女の猪熊みりあと鷹見エレナまで巻き込んで大地のモテ改革を開始!! 大地の学園生活は瞬く間に一変していき――!? 第13回新人賞<優秀賞>の正統派青春ラブコメ、爽快に登場! 

 

今年三月に『(略)』を「間違いなくニ〇一七年のMF文庫Jで最もシコれる作品」と称賛してから八ヶ月。

 

ranobeprincess.hatenablog.com

 

このまま『(略)』がニ〇一七年のシコリティ・オブ・MF文庫Jを征するのかと思いきや、黒船が来襲したわ!

今回レビューする『絶対彼女作らせるガール!』も『(略)』に負けず劣らず、場合によってはそれ以上のシコリティかもしれないの!

 

著者のまほろ優太先生はクラクラプレイヤーなんだとか。

 

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最近は新人賞受賞作でも売れない時代に突入してるってことで、実際あたしも表紙とあらすじ見ただけじゃ買うつもりは全く無かったのよね。

確かにあやみ先生の表紙は可愛いんだけど、ラノベヒロインが可愛いのは当たり前だし。カレーが辛いのと一緒。それだけじゃセールスポイントにならない。

あと「必勝の女神」って言われても「おっぱい揉ませてくれる女神出しなさいよ!」って言いたくなっちゃうし。読者からすればどうでもいい情報。

 

でも! ピンナップを見て! 考えが変わったわ!

 

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男口調の生徒会長キタ―(゚∀゚)―

(∀゚ )―(゚  )―(  )―(  )―

(  ゚)―( ゚∀)―(゚∀゚)― !!

 

あたし、こういうキャラ本っ当に大好きなの!

体は女子だからおっぱいの柔らかさやシャンプーのいい匂いを堪能できて、心は男子だから弱々しくなくて話してると楽しそうなんだもの!

ここを口絵指定した編集はGJだわ!

玲花に抱きついて、ポニーテールのサラサラ感を味わいたくなっちゃう!

 

実際に読んでみて、これは面白さを広めるべき作品だと確信したわ!

あと、同じ新人賞受賞作第一弾の『せんせーのおよめさんになりたいおんなのこはみーんな16さいだよっ?』と『僕の知らないラブコメ』はアキバblogに取り上げられてるのに、

 

blog.livedoor.jp

 

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この作品だけずっと待ってても一向に取り上げてもらえず仲間外れにされてるから、そんな可哀想な状況を見かねて、あたしがレビューしてあげることにしたの!

あたしはマイナーな作家の味方なんだから!

 

最初の二章は導入で、次の三章から五章まではコミュニケーション獲得ハウツーの要素が強いわね。『魔王は服の着方がわからない』を三倍濃縮(あっちと比べて文字数も情報密度も多い気がする。流石に質では負けてるけど)して、ファッション・トーク・メンタルに分割した感じ。

特に第三章のファッション指南で、合計十数行かけて服のでき方を語る辺りはMBが降臨したんじゃないかと思ったわ。

発売時期的に完全な偶然なんだろうけど、力の入れようが似すぎててビックリ。

 

『魔王服』との相違点は、陰キャを甘やかしてないことかしら。

第五章のメンタル指南では、身も蓋もない発言がポンポン飛び出すわ。

 

「――ここで俺の一番言いたいことだ。亀丸。ヒエラルキーの高いオスがモテる。だからこそモテない奴がすべき事はただ一つ。メディアがブサイクをアイドルに仕立て上げるように、自分のヒエラルキーが高いように見せかけることなんだ

 

「なんかお前の姿見えるわ。好きな女には、優しく紳士のつもりで『大丈夫? 疲れてない? 何かしたいことある? 僕は何でもするよ?』って機嫌を窺うキモイ奴だろ?

「そ、それは……」

「相手からはこう見えてるぞ。『うわなんか必死。他に相手してくれる人いないのかな? 弱いオスなのかそれか病気でも持ってるのかな? この人と子供作ってもすぐ死にそう、やめとこ』そうメスは本能的に察するんだよ

 

きっつ!

 

でもあたしだってよく考えると、ご機嫌取りに近づいてくる人間はあまり好きじゃないのよね。他人に媚びる人間はキモい。

過激だけど、真実を付いてる面もあることは間違いないわ。

 

玲花目当てで買った本作だけど、もう一人あたしの好みなキャラがいたの!

それがエレナよ!

 

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改稿前はエレナがメインヒロインだったみたいなんだけど、「訓練されたドM以外楽しめない」「あなたが思うほど罵られて喜ぶ男性はいません」って編集に指摘されて絵馬とヒロイン交代したんだとか。

 

本当に編集は勿体無いことをしたわね!

 

ラノベ読者は基本ドMなのよ!

九割以上は美少女に罵られたい願望持ちよ!

容姿に恵まれなくても女の子にかまってもらえるなんて、天国じゃない!

 

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あああああああああっっ!!

足が! げしりと! 頭の上に!

上履きからフローラルな香りが!

黒ストに包まれた足が柔らかそう!

パンツ見せてくれてありがとう!

腕組んで侮蔑的にこっちを見つめてる表情が激シコ!

 

美少女にスキンシップ(足置き)してもらえるだけでも十分ご褒美なのに、エレナはそれ以上のご褒美を与えてくれるのよ!

 

「そう『彼女がほしい』のね? それなら簡単じゃないの」

 鷹見さんがそう答えるけど、簡単なはずがないじゃないか。玲花先輩と僕との距離は遠すぎるっていうのに。

 そう思っていたら――。

「私が付き合うわ」

 ぶっ放されたのは意味不明な解決策だった。

「言葉の通りよ。私が付き合うわ。はいこれで終わり。絵馬、お疲れ様。もう大丈夫よあとは私が亀丸くんを幸せにするわ」

 冗談にしては冷静すぎる口調。皆どう反応したらいいか分からずおろおろしている。

「ふふ、よもや文句などあるわけないわね? ミスコン一位の彼女よ。別に付き合った事を周りに言いふらしてもかまわない。私から告白されたと自慢してもいい。どう? とっても優越感に浸れると思うの。バカな男はそういうのに憧れるのでしょう?」

「で、でもそんなの嘘だしだめだよ!」

「嘘じゃないわ、絵馬。ふふ、それならば絵馬を護るという覚悟のほど、その証拠を手っ取り早く魅せてげましょう」

 と、鷹見さんが僕の頭から足を下ろしたかと思えば、正座している僕の目線に合わすように床に膝をつく。至近距離には宇宙みたいに深い色をした黒い瞳。そして鷹見さんの両手が僕の後頭部に回り、その顔が僕の視界いっぱいに近づいてきて――。

 キス、されてしまった。 

 しかも、

「んん―――――――――っ!?(ちゅるちゅるちゅるちゅるちゅるちゅるちゅる!)」

 待って。待って待って待って。し、舌! 舌がにゅるるるって!

 

ディープキスキタ―(゚∀゚)―

(∀゚ )―(゚  )―(  )―(  )―

(  ゚)―( ゚∀)―(゚∀゚)― !!

 

何   こ   れ   !   ?

ミスコン一位が顔近づけて来てくれて、目線合わせてくれて、普通のキスどころかディープキスなんて、心のちんこが勃起不可避だわ!

 

ドSでチョロいエレナは、これだけでは飽きたらず、禁断の領域に突入するわ。

 

「私、綺麗? 可愛い?」

「み、ミスコン一位だし、可愛いだろうとは思うけど」

「ならいいじゃない付き合いましょう? ふふ、キスだけならいつでもどこでもさせてあげるわ。クラスみんなの前で舌を入れたっていい。それに――その先だって構わない」

(略)

「正座」「んぐぅ!?」

 また僕の頭を組んだ足で踏みつけてきたぞ!?

「ふふ、私、執筆するときの足置きが欲しかったの。貴方の踏み心地、なかなか悪くないわ。彼氏の務めとして彼女の言う事は聞いてくれないと」

「ぐ、ぐぐ……冗談なのは分かったから、普通に上履きを履いた足で踏むのはやめてほしいなあ……!」

「ふふ、いいわ。彼氏のお願いなのだから上履きくらいは脱いであげましょう(げしり)」

「んぐっ! 全然問題が解決されてないんだけど……!」

 まだ僕は正座&足置きのままだった。それにさっきとは違って脳天に黒スト越しの体温が伝わってくるしなんなんだ……!

「そうね、そのまま足置きとして頑張って私を満足させたならば、彼女としてエッチなことだってさせてあげる。体育倉庫やトイレの個室に連れ込んだっていい

 

エッチの許可キタ―(゚∀゚)―

(∀゚ )―(゚  )―(  )―(  )―

(  ゚)―( ゚∀)―(゚∀゚)― !!

 

超   最   高   !

エレナを屈服させる妄想が捗るわ!

「上の口はドSだけど、下はどうかな?」って詰め寄って、どんな反応するか観察したい! あたしが大地だったら、速攻連れ出してエッチ開始よ! 心のちんこが緊急射精案件だわ!

 

MFはいい新人を発掘したじゃない!

こういう人材を育てられる限り、ラノベ界は安泰ね!

 

ここまではほとんどヒロインのシコリティについてしか触れてなかったけど、まほろ勇太先生って、新人作家とは思えないほど人物描写や心理描写が上手なのよね。

例えば第一章のこのシーン。

 

  玲花先輩が視線を向けた先には、生徒会室の本棚に飾られた写真立て。

 そこには僕と玲花先輩と去年の生徒会の面々と、それに囲まれた『あの人』がいた。

 坂町寅司。前生徒会長。前年度卒業生。

 細身で長身。飄々としてていつも穏やかな笑顔を浮かべている先輩だった。

 玲花先輩は完璧超人とよく謳われているが、坂町先輩は宇宙人と呼ばれていた。

 テストの成績は満天か、遅刻もしくは居眠りで0点のどちらか。数学オリンピックのメダリスト。近くの大学の理系の研究室に出入りして何かの学会発表でもしていたらしい。

 生徒会においては、ふらりと現れてものすごい集中力と速度で仕事を終わらせたかと思えばまたふらりと去っていく、神出鬼没の生徒会長。

 そんな坂町先輩は卒業後にアメリカの大学に行った。最後まで訳の分からない人だった。

「ふふ、あの人は今ごろ何をしているのだろうな……」

 玲花先輩が少しだけ寂しそうに目を細め、窓の外の青空を見上げた。

 ――僕は玲花先輩が好きだ。でも僕の呼ぶ『あの人』と玲花先輩の呼ぶ『あの人』は決定的に違っていたのだった。

 

寅司がどんな人物かを記述するだけで、大地との間にある圧倒的な差が浮き彫りになる。勝つとか負けるとか以前に、勝負にならない。

「目の前に」大地がいるのに、「目の前にいない」寅司に思いを馳せる玲花を描写することで、大地の置かれた悲惨な現実が強調されてる。

 

二ページ後の描写も刺さる。 

 

 あの人の心の中に僕の居場所はない。

 それはそもそも坂町先輩がいなくたって同じ。

 僕が先輩の隣にいても釣り合わない、生徒会室で二人きりになったって簡単な会話すら成り立っていない。

 何が時間が解決だ。解決したって僕は僕のまま。先輩が好きになってくれるなんてあるはずがない。それなのになんで期待していたんだ。なんで分不相応な夢を見ているんだ。なんでこんなに……悲しい気持ちになるんだ。

「…………幽霊の、くせに」

 諦めていたつもりだったからこそ、見て見ぬふりのできた先輩との距離。

 でも、いったん本当の気持ちに気づくと、あまりの距離に今さら絶望する。

 悲しくて、悔しくて、気づくと僕は走っていた。

 校舎を出て夕日の帰り道を走る。涙で視界がぼやける中、人気のない国道の坂を走る。

 もう何もかもが嫌だった。自分の姿も、暗くて口下手な性格も、生徒会室から泣きながら逃げ出した意気地のなさも。

 思考の歯車が加速する。大小の歯車が噛み合い、心を暗闇の底に沈ませる。

 話しかけたい想いを伝えたい。でもこんな自分じゃダメだって自分が一番理解してる。変わりたくてもこんな自分じゃ変われない、変われるはずがない。自己嫌悪、本当に嫌だ自分が死ぬほど嫌いだ――。

 

 「知識」として理解はしていた。玲花が自分を好きになるなんてまずないだろうことは分かってた。けれど、実際に現実を突き付けられると受け入れられなかった。「感情」として納得はできなかった。

考えがまとまらなくて、心のなかに溜まってた思いを次々に吐き出せば吐き出すほど惨めな自分が露わになって、悲しさや悔しさが増幅してく。

 

叶わぬ恋が、本当に叶わない恋だと知った時の気持ちが痛いほど伝わってくるわ。

丁寧な描写と、予定調和を排した展開が、読者を物語の世界へと誘う。

 

特に最終章は、まるで自分が主人公に憑依したかのようだったわ。

かつての自分から脱却した大地が、恋に決着を着けるべく準備をするシーンは、 情景や空気感がありありと伝わってきた。

 

 翌日、良く晴れた朝。

 僕は十分な時間をかけて熱いシャワーを浴びた。そうして剃刀で顔を剃る。ヒゲらしいヒゲは生えていないのだけど今日はうぶ毛の一本も許さない。

 完全武装であの人の前に立ちたかったから。

 歯を磨く。爪を切る。髪に整髪料をつけて毛束を作る。そして前日にアイロンがけした制服を着て――。

 寮の玄関を出る。あの人の下へ向かった。 

 

勇気を振り絞って踏み出した一歩。

その先の結末を是非見届けてほしいわね。

 

絶対彼女作らせるガール! (MF文庫J)

絶対彼女作らせるガール! (MF文庫J)