引きこもりか登校か!? 勇者と魔王のファンタジック・コメディ!
魔王の和平申し出により、勇者はいらない子になった。普通の高校に馴染めず引きこもりになってしまった勇者だったが、彼の前に現れたのは、学級委員長に就任した魔王!? プリントを届けにくる魔王と一緒に遊ぶようになり打ち解けていく二人。しかし、ある日魔王が「再び学校へ通う」よう言い出し、勇者はそれを断固拒否!! やがて事態は勇者パーティと魔王軍を巻き込む一大事に……!! 引きこもりか登校かを巡り争う勇者と魔王のファンタジック・コメディ、開演!
先月は『異世界クエストは放課後に!』を一冊レビューしただけで、
他の話題といえば『異世界テニス無双』でキャッチコピーがどうのこうのとか、mizunotoriの狂ったイデオロギーが相変わらずだとか、『絶対彼女作らせるガール!』の売上に貢献しまくったけど二巻の帯コメントに採用されなかったとか、ブログタイトルに反して全然ラノベレビューできてなかったわね。
『絶対彼女作らせるガール!』の件は今もショックを引きずってるんだけど、あたしのレビューを待ち望んでる作家がいるみたいだから、一ヶ月ぶりにレビューするわよ!
オレ、ニカンカキタイ
— 春日山せいじ (@kasugayama_se) 2018年1月22日
イッカンノウリアゲシダイ
ウレロ
ファミ通文庫の発売予定作品に名前が出てきてからずっと注目してたわ。
だって「学級委員長まおう」よ! なにこのパワーワード!
魔王って、普通は地球じゃなくてファンタジーの住人でしょ!?
それが学級委員長やってるって、ギャップ大きすぎぃ!
最近はなろう系が大流行してて「ウェブ発じゃないと売れない」「異世界以外は売れない」とも囁かれがちで、ラノベレーベルによっては「ウェブ発異世界専門レーベル」と化してそうなとこまである時代。
『まよチキ!』『お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ』『バカとテストと召喚獣』といったラノベの学園コメディが様々にメディアミックスされてブレイクしてたのも今は昔。すっかり鳴りを潜めてしまったわ。
ファミ通文庫もポスト『バカテス』を生み出そうとニ〇一三年一月に『四百二十連敗ガール』を刊行し、PVが制作されるまでの盛り上がりを見せたはいいものの、結局四巻で終了し、それ以降は学園ものが話題になることはあまりなく、今ではウェブ小説全盛の流れにノリノリ。
『バカテス』のようなぶっ飛んだコメディはもう現れないのか……と落胆してたわ。
だから本作の表紙やあらすじが公開されたときは超興奮したわ!
ハリウッドのB級映画みたいな、強引に押し切ろうとするノリが好き!
勇者と魔王が出てきて学級委員長が存在するくらいだから、異世界の魔法学園が舞台なのかと思いきや、表紙では勇者がゲームのコントローラー手にしてるし!
勇者って引きこもるんだとか、何で魔王が日本にいるんだとか、プリント届けるのは高校じゃなくて小学校じゃないかとかいろいろあるけど「こまけえことはいいんだよ! 俺は現代で学園コメディをやりたいんだ!」って春日山せいじ先生のパッションが伝わってくるわ!
魔王を学級委員長にしたおかげで、制服姿が映えるっ!
学校に行かせようとする魔王と、断固拒否して引きこもりたがる勇者のバトルが後に勇者パーティーと魔王軍を巻き込む一大事に発展するとか、動機のくだらなさに反比例するかのごとく無駄に壮大な展開! まるでミニ四駆やベイブレードで世界征服しようとするかのようだわ!
勇者(これが本名、苗字は山本)の引きこもりにかける熱意はハンパないわ。
終盤の台詞は神がかってる。
「……ああ、確かにお前たちと送る学校生活は楽しいだろうさ。でも……でもな」
勇者の身体がゆらりと怪しく揺れる。そして息を大きく吸い込むと、全てを吐き出すようにして叫びだすのだった。
「でもな、それを差し引いても俺にとって学校っていう場所はクソ過ぎるんだよ! それこそクソみたいなスクールカースト制度とか! 今さらどれだけ頑張っても零点しか取れないテストとか! バカにされるくらい高すぎる運動能力とか! 地獄のようなクラスメイトたちとのコミュニケーションとか! エトセトラエトセトラ! 一学期の体育祭の時なんか、女子から『キモ』とか言われたんだぜ!? それから俺の渾名はしばらく『キモダンク』だった! そもそも俺、勇者だよ!? 学校行く意味ある!?」
そこまで言い終えた勇者は肩で息を切らしていた。
勇者の激白に、魔王もエイミーもぽかんと口を開けることしか出来ていない。
「……他にも渾名はいろいろあるぞ。『がんばるくん(笑)』とか『ムッツリ聖剣』とか『お前、泳ぐ必要ねえしw』とか『万年ホームラン』とか『オーバーロード』とか『百八式』とか『体育ブレイカー』とか……。本気でやればそんな風に詰られて、だからといって手を抜けば『お前の存在価値ってなに?』と責められる。ねえ、どうしろっての!? 死ねっての!?」
勇者はもう涙目だった。魔王とエイミーは気まずそうに視線を逸らすことしか出来ない。武道家はもう稼働していないか稼働していないフリをしているかのどちらかだった(実際、都合が悪くなった時に武道家がよく使う手である)。
この魂の咆哮! ラノベはこれぐらいぶっ飛んでないと!
ファミ通文庫はこの作品をきっかけに、なろうとソシャゲノベライズ依存から脱却できるといいわね!