とある王女の書評空間(ラノベレビュー)

二次元世界のエリート美少女による、宇宙一クオリティの高いラノベブログよ!

「野菜の日」にNewDaysとコラボした、電撃文庫の神懸かり的なマーケティング戦略。

元気にしてたかしら、平民のあんたたち!(赤月ゆに風)

 

八月三十一日、今日は「野菜の日」。 

八・三・一の語呂合わせで「やさい」ってことね。

昭和五八年に全青連――全国青果物商業協同組合連合会――が制定したわ。

消費者に野菜の栄養価値を再認識してもらい、消費の促進を図ろうって狙いよ。

 

野菜の日について – 全青連公式サイト

 

厚生労働省は一日の野菜摂取目標を三五〇グラム、お皿に換算して大体七皿分としているけれども、同じく厚生労働省による「国民健康・栄養調査」によると、目標に達していないどころか、年々数値が減少しているわ。

 

www.mhlw.go.jp

 

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二十歳以上の世代別で野菜を三五〇グラム以上摂取している割合を見ると、男女とも若くなればなるほど摂取量が減少し、二〇歳から二九歳までの最も若い世代が最も摂取量が少ない結果に。

 

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そんな状況を全青連が危惧したのか、はたまたKADOKAWAの方から呼びかけたのかは定かでないけど、電撃文庫二五周年のスペシャル企画としてJRのエキナカコンビニ「NewDays」とのコラボ企画が今月二一日から来月三日まで行われてるわ。

 

dengekionline.com

 

NewDaysで税込み七〇〇円以上購入すると、『アクセル・ワールド』『狼と香辛料』『キノの旅』『ソードアート・オンライン』『デュラララ!!×博多豚骨ラーメンズ』『魔法科高校の劣等生』の六作品から(多分ランダムに)一枚クリアファイルが貰えるの。 

 

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豪華過ぎぃ!

NewDaysの制服着てるイラストは原作イラストレーターの描きおろしだし、裏には著者書き下ろしの掌編まで掲載されてるのよ! 

しかもアスナ役の戸松遥がナレーションするCMまで作ってるし!

 

www.youtube.com

 

ここまでやってのける電撃文庫は流石ね。

シェア一位を誇るだけあって、他レーベルの追随を許さない。

数多く存在するラノベレーベルの中で唯一、戦略を立ててマーケティングしてる。

 

さあ、いよいよメインの話!

電撃文庫の「野菜の日」コラボがにいかに優れているかを解説してくわよ!

「クリアファイルが手に入るなんてラッキー!」なんて認識で止まってるラノベ関係者は甘い、甘すぎるわ!

この先を読んで、マーケティング感覚を身に付けることね!

 

①オタク層以外への知名度拡大 

出版不況、娯楽の多様化、ウェブ小説の登場……

原因は様々考えられるけど、いずれにせよラノベの売り上げは減少傾向。 

 

www.matolabel.net

 

売れなければ利益が出ない。利益が出なければ事業ができない。

ラノベを衰退から救うためには、この状況をどうにかしなければいけない。

 

取れる戦略は二つ。

「利益率を増やす」か「売り上げを増やす」よ。

ただ前者の場合だと、電撃文庫は文庫本レーベルだから、なろう系みたいに単価一〇〇〇円超えなんてできないし、かといって印税率や出版社の取り分を減らしたら業界が先細っちゃう。本末転倒だわ。

 

とすると、売り上げをどうにかするしかない。

「売上=単価×数量」であり、今の話から単価を増やすのは無理だと分かったのだから、なんとかして数量(=売れる冊数)を増やす必要がある。

 

あたしみたいなヘビーユーザーは月十数冊、もっと凄いラノベ読みだと月数十冊買うし、とらのあなとかのオタク専門店だと特典が付いてくるから、それ目当てで同一書籍を複数冊購入する読者もいるけど、個人の可処分所得には限界があるわ。

いつまでもこの方法に依存はできない。じゃあどうすればいいか。

 

一人の読者に大量購入させるビジネスモデルが駄目なら、逆にすればいい。

つまり、例え一冊だろうと、大勢の読者が購入すれば売り上げは増えるわ! 

そのためには顧客をオタク層だけでなく、これまでラノベという概念自体を知らなかった層にも届くようにすればいい。

 

あたしのブログを昔から読んでるなら分かるわね?

こんなときに役立つフレームワークAIDMAよ!

 

mba.globis.ac.jp

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AIDMAのファーストステップ(=Attention)を達成するにあたって、「NewDaysで七〇〇円以上購入するとクリアファイル配布」という条件はよくできてるわ。

ボトルキャップみたいに「特定の製品を買わないと手に入らない」仕組みにしてしまうと、「これ、手に取りにくい……」みたいな感じでオタク系コンテンツに親和性の低い顧客を逃しちゃうけど、「七〇〇円以上買った人には無条件で配布します」なら避けられる心配はないしね。

 

捕捉率が高くなるのはもちろん、捕捉数の心配もない。

 

www.jreast.co.jp

 

仮に新宿駅利用者中の一〇%がNewDaysを利用するとしておよそ七七九〇〇人で、そのうち七〇〇円以上の購入者も一〇%だとして七七九〇人。

一駅だけ、一日だけでこの人数。

これがJR全駅で二週間続くわけだから、延べ百数十万人が電撃文庫を認知するわ。エキナカコンビニの特性をうまく利用してるわね。

 

②二次元と三次元の橋渡しをする世界観

別にクリアファイルを配布する「だけ」なら、(予算を考えなければ)電撃文庫以外のレーベルでも可能だったかもしれない。

けれど、問題はそこから先。

 

例えば業界第二位(今は後退?)のMF文庫Jが同じ企画を実施したとして、『緋弾のアリア』や『ノーゲーム・ノーライフ』や『Re:ゼロから始める異世界生活』の登場人物がNewDaysで野菜を勧める姿なんて想像できるかしら?

あるいはコミカライズが好調なGA文庫が同じ企画を実施したとして、『りゅうおうのおしごと!』や『ゴブリンスレイヤー』や『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』のキャラがNewDaysで野菜を勧める姿なんて想像できるかしら?

 

多分無理なんじゃない?

少なくともあたしはそんな光景が全く浮かばなかったわね。

 

同じ人気作でも電撃文庫とそれ以外のキャラでなぜここまでの違いが出てしまったのかを考察すると、電撃文庫の人気作はどことなく現実っぽさも持ち合わせてるのに対し、他レーベルの人気作は空想っぽさの割合が高いんじゃないかしら。

 

その好例が『ソードアート・オンライン』ね。

PSVROculus Riftが出る遥か前からVRゲームの可能性を提示し、VRの世界を駆け巡る楽しさを読者に提供したその先見性は評価に値するわ。

現実に根差した世界観だからこそ、IBMとのコラボだってできた。

 

www.mugendai-web.jp

 

SAOのイベントでは、会場スタッフが来場したファンと話す際の単語集まで作ったという。山口部長は、スタッフ陣にも“クレイジー”なファンが多く、そんな人たちがプロジェクトに携わったことが成功の要因として大きいと話す。

原作レイプとは言わせない──日本IBMの“オタクマーケター”が倍率500倍のSAOコラボを実施できた理由 (2/2) - ITmedia NEWS

 

去年公開された映画版の『オーディナル・スケール』では、AR(拡張現実)が日常に溶け込んだ世界を描いたわ。

VRでは周囲に見える物体や風景は虚構だったけど、ARでは物体も風景も実在してるから、より現実感が増してる(=嘘臭さが少ない)。

ARデバイスであるオーグマーのデザインにソニーのデザイナーが参加してるのも、二次元と三次元の橋渡しに一役買ってる。

 

SF映画には非現実的なガジェットが数多く登場する。しかし映画『劇場版 ソードアート・オンライン –オーディナル・スケール–』に登場する「ARデヴァイス」は侮れない。開発にソニーのデザイナーが参加したことで、本作はフィクションにとどまらず、預言に等しい意味合いをもつことになったからだ。

物語はテクノロジーを夢見て、デザイナーは物語へフルダイヴする:映画『劇場版 ソードアート・オンライン –オーディナル・スケール-』をめぐるダイアローグ|WIRED.jp

 

要するに、電撃文庫はキャラクターIP(知的財産)の活用範囲が圧倒的に広いのよ。

というか、広く活用できるIPとなるような作品が多い。

だから非オタ層を対象とするマーケティング戦略を実行できる。

 

野菜の日」コラボ作以外にも『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』だって一八歳選挙権キャンペーンとコラボしてるし、昨日の記事で取り上げた『はじらいサキュバスはドヤ顔かわいい。』だってYoutubeや質問箱に活動範囲を広げてるし。

 

IPを制する者がラノベを制する。

今後のラノベ業界はそういう風に変化してくのかもね。 

 

野菜を食べながら、ラノベの未来に思いを馳せるのもいいんじゃないかしら。