とある王女の書評空間(ラノベレビュー)

二次元世界のエリート美少女による、宇宙一クオリティの高いラノベブログよ!

いい人生を歩めるかどうかが生まれつき決まってたら、どうする? しかも、後からそれを変えられなかったら?――『最強付与術師の成長革命 追放元パーティから魔力回収して自由に暮らします。え、勇者降ろされた? 知らんがな』

最強付与術師の成長革命 追放元パーティから魔力回収して自由に暮らします。え、勇者降ろされた? 知らんがな 最強付与術師の成長革命 ~追放元パーティから魔力回収して自由に暮らします。え、勇者降ろされた? 知らんがな~ (アルファポリス)

 

あらすじ

一人だけ成長が遅いと言いがかりをつけられ、パーティを追放された付与術師のアレン。しかし彼は、世界で唯一の“永久持続付与”の使い手だった。自分の付与術により、ステータスを自由自在に強化&維持できることに気づいたアレンは、それを応用して無尽蔵の魔力を手に入れる。ソロ冒険者として活動を始めた彼は、いとも容易くドラゴンを討伐し、その名を轟かせていくのだった。一方、アレンを追放した勇者ナメップのパーティは、急激な弱体化に見舞われ、国王の前で大恥をかいてしまい……

 

公務が忙しすぎて、十月は全く記事を投稿できなかったわ。

ただでさえラノベブログはYouTubeTikTokに比べて訴求が弱いってのに、この更新頻度じゃオワコン化にますます拍車をかけちゃうわね。

 

 

 

というわけで、リハビリがてらレビュー。

月ノみんと先生もレビュー歓迎してるみたいだしね。

 

 

 

 

作品情報

アルファポリスからの書籍化作品。

 

www.alphapolis.co.jp

 

ぶっちゃけアルファポリス作品はなろう系のテンプレを忠実になぞったような作品が多くてジャンクフード感あるわ。協力者やってるようなラノベ読みでもあんまり読んでないような気がする。あたしもそんなに読んだ記憶ないし。

なんだけど、無性にこうした作品を読みたくなっちゃう気分もあるのよね。

「時々食べたくなるマックのハンバーガー」的なポジション

 

YouTubeで先生自らレビューしてるから、購入の参考にするといいかも。

 

www.youtube.com

 

全ての物事が期待通りに進む軽快さ

内容に関してはあらすじ通りだから、これ以上言うことがないわ。

強いて挙げるなら、一つは主人公を追放したメンバーのその後かしら。

 

 

追放ものでのざまあって「ギルドをクビになる」とか「爵位を剥奪される」とか「鉱山での労働を強いられる」とかが多いけど、ナメップとマクロは処刑されちゃうの。

まあ、ナメップはリーダーの責務も多少は果たしてたからアレンがこっそり【防御力強化】とか付与して断頭台から逃亡できたんだけど、「全部俺の実力なんだよ!」ってクズな性格は変わらなかったから、結局アレンによって兵士に突き出されちゃった。

 

マクロはナメップ以上のクズで、勇者としての職権乱用でやりたい放題。

酒と女に入りびたり、王の側近を抱え込んで殺人だって揉み消しちゃう。

挙句の果てには王の毒殺まで企てるけど、アレンに阻止されて野望は潰えるわ。

 

いやー、二人とも多分十代(ナメップは作中に十七歳って記述あった)だってのにこのクズっぷり。他の作品ではなかなかお目にかかれないわね。

あ、ちなみにエレーナはナメップとマクロほどのクズじゃないから処刑はされてないわ。しばらく投獄はされるみたいだけど。

 

もう一つ特筆すべき点を挙げるとすれば、ステータスに関してね。

「中学生が作ったRPGの世界じゃないの?」ってくらい、気軽にステータスの数値をいじりまくり。

あたしは校正じゃないからステータスが出る度に一々数値が正しいかの確認はしてないけど、最終的にはアレンとミネルヴァが互いに【経験値付与】と【レベル付与】を繰り返して魔力を数億や十数億にまで増やしてる。

 

 ――――――――――――――――――
 名前 アレン・ローウェン
 職業 付与術師
 男 16歳

 レベル 1000


 攻撃力  94000
 防御力  82000
 魔力   1239321632
 魔法耐性 81000
 敏捷   61000
 運    53000
 ――――――――――――――――――

 

 

 ――――――――――――――――――
 名前 ミネルヴァ・ティマイオス
 職業 付与術師
 男 17歳

 レベル 100


 攻撃力  45600
 防御力  55400
 魔力   672431567
 魔法耐性 129800
 敏捷   98200
 運    88700
 ――――――――――――――――――

 

初代ポケモンでバグ技を使いまくってもこんなステータスにはならないわよ。

幽焼けがレビューで言ってたけど、まさに「パーフェクト・なろう・ライトノベルね。

 

 

www.youtube.com

 

月ノみんと先生、魂の咆哮

さて、作品内容に触れるのは以上なんだけど、ここで終わるのであればわざわざ本作を取り上げる意味なんてないと思うの。

似たような作品やこれよりクオリティの高い作品なんていくらでもあるわけで。

 

『最強付与術師の成長革命』を取り上げた理由。

それはこの作品が、あたしには「月ノみんと先生の魂の咆哮」に思えたからよ。

 

先生のTwitterアカウント(「Xアカウント」だと相変わらず不自然に感じる)を見たことあるなら知ってるかも知れないけど、自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)でずっと苦しんでるのよね。

 

 

ここはラノベブログであって医療関係者が集まる場所ではないからASDについて軽く説明すると、要はラノベのぼっち主人公みたいになってしまう症状」とでも言えばいいかしら。

 

 

ASDの男性は、学生時代から<周囲との認識のズレ>や<周囲との行動の違い>を感じていた。大学以前の学生生活では、運動が出来ないことが本人の苦手意識や、仲間はずれにつながりやすかった。また、物事の受け止め方や考え方の違い、さらに、体力や積極性の違いを感じていた。そして大学生活では、履修や単位取得、実験や研究遂行などでつまずく者もいた。当事者は、年齢が上がるにつれて、周囲の活動の質と量が変化していく中で、体力的な違いや消極性から、周囲と同じようには動いたり考えたりすることが出来ないことにズレを感じていた。

成人期に自閉症スペクトラム障害の診断を受けた男性当事者が経験する困難と対処の過程

 

 

もっと嚙み砕くなら「多数派と同じような成長をしなかったこと・多数派と同じような価値観が形成されなかったこと」とも言えるわね。

例えば「みんなと同じことをするのが安心」という価値観を持っているのが普通(らしい)なのに、ASDはそうした価値観を持っていないから流行りについていけず、結果周囲から孤立してしまう(しかも孤独であることにそこまで不安を感じない)……みたいなのがASDの症状かしら。

 

「普通が正しいのか?」という是非は置いとくとして、ASDの成長速度は普通――専門用語で言うなら定型発達(Typically developing: TD)――と比較して遅い傾向にあるため「〇〇歳までにこういったスキルを身に付けてほしい」「大人であればこれくらいはこなせてほしい」という社会の要請に応えられず、就労に失敗しているのが多いという現状よ。

 

世界全体で推定7000万人とも言われるASDを抱える人々のうち、約8割が無職もしくは著しく能力以下の仕事に従事している

アングル:自閉症を「IT戦力」に、米就労支援の最前線 | ロイター

 

 

 

「なら努力すればいいじゃないか」と言うかもしれないけど、今は令和。

薄々気が付いているように、ASDになるかどうかは遺伝的であり、しかも先天的であり、加えて治療法は存在しないという三重苦よ。

 

The variation in the occurrence of autism spectrum disorder in the population is mostly owing to inherited genetic influences, with no support for contribution from maternal effects.

(集団における自閉症スペクトラム障害の発生のばらつきは主に遺伝的影響によるものであり、母親の影響による寄与は裏付けられていない)

Association of Genetic and Environmental Factors With Autism in a 5-Country Cohort | Genetics and Genomics | JAMA Psychiatry | JAMA Network

 

ASDは他の神経発達症と同様、一般的には治療法は存在せず、一生続き、治療より療育や支援に重きが置かれる。

自閉症スペクトラム障害 - Wikipedia

 

つまり、いい人生を歩めるかどうかは生まれつき決まっていて、後からそれを変えることは不可能。無理ゲーね。

どうあがいてもこの世界で報われないなら、もう異世界しかないでしょ。

人生が上手くいかない原因は「遺伝子が悪かったから」「環境が悪かったから」に集約されてどんな科学技術でも政治制度でも解決困難だけど、異世界転生は遺伝の問題も環境の問題も解決してくれるってのが人気の秘訣だと思うの。

 

想像してみなさい。

この世界では遺伝子も環境も変えられないけど、異世界に行けば自分のステータスを何億とか何十億とかにできるかもしれないのよ。

生まれつきのデバフを解除して、これまで手に入れられなかったものを手に入れられるかもしれないのよ。

それは現代に残された数少ない救済と呼べるんじゃないかしら。

 

 

あたしは普段忙しいし、文章が浮かんでくるタイプじゃないし、執筆速度も遅い。

そんなあたしに「この作品をレビューしよう」と思わせたのは、月ノみんと先生の哲学を感じたから。レビューをしなければいけないとあたしの心を震わせたから。

そこに、物語の存在意義があると思ってるわ。

 

bookwalker.jp